消費税1%で2.7兆円、5%で13兆5千億円の根拠が分からない [時事寸評]
4月2日のMSN産経ニュースの報道。 かなり前の記事だが、 意味が分からなかったのであえて紹介しておく。
分からないのは、次の2点の根拠である。
増税対象に消費税を選ぶのは、1%の増税で年約2・7兆円もの税収が見込める上
5%増税で国と地方を合わせた消費税収は年13兆5千億円増える
まず最初の数字。2.7兆円という数字はどこから出てきたのか? 過去の報道を調べても根拠が分からなかった。どなたか教えていただけませんか?
現在の消費税収は年間約10兆円程度。消費税5%で逆に計算すれば、
10÷0.05 = 200
従って、税抜きの売上げが 200兆円あって、その5%が消費税として徴収されて10兆円になるという計算だ。 実際は、物品によって税率が変わったりするので単純には計算できないが、今回はモデルの検証ということで、全部5%ということにしておく。
仮に、消費税率を上げても税抜きの売上げが変わらないとすれば、200兆円に対して1%の税収が増えるから、
200×0.01 = 2
2 兆円。差額の 0.7 兆円はどこから来たのだろうか? 謎だ。もしかすると、私のデータが古いのかもしれない。
そして、ここが重要だが、消費税率を上げて物価が上がったら、売上げが変わらないというのは有り得ないのである。 あなたの財布の中身は、消費税率が上がった日から増えますか? 国民が持っている現金は、消費税率が上がっても増えない。 一般に、税率を変えると景気に影響することは常識だ。
消費税率を上げた場合、二つのパターンが考えられる。
まず、税率が価格に転嫁された場合。 つまり、消費税率が上がって値上げになる場合である。 消費者が持っているお金は増えないのだから、値上げによって買えない、買わないという流れになり、基本的に、売上げは下がると考えるべきである。
仮に1%の税率アップで売上げが 1% 減ったとすれば
200 * 0.99 * 0.06 ≒ 11.9
11.9 - 10 = 1.9 だから、消費税を1%上げても、増える税収は 1.9 兆円にしかならない。
もう一つのケースは、税率を価格に転嫁しない場合。値上げすると売れなくなるので売る人が自腹を切るということである。税率が上がる分は利益が減るわけだ。この場合は、消費者から見れば商品の金額は変わらないから、税込みで同じだけの売上げがあると想定してもよい。
しかし、税率が変わるので、税抜き200兆円+消費税10兆円の、税込み210兆円の内訳が変わることになる。
210*(0.06/1.06) ≒ 11.9
やはり 1.9兆円の消費税収増、という計算になる。しかし、これも2.7兆円には及ばない。
そして、このケースの場合に注意が必要なのは、他の税収、例えば法人税の減少である。 税抜き価格を下げるのだから、当然、利益は減る。 従って、利益に税率を掛け算して徴収する仕組みの法人税は、当然減ることになる。 消費税収は増えても、他の税収が減ったら困るのでは?
トータルでどの程度に税収が見込めるかを計算するのは難しいので、今回はパスさせていただく。 どんな計算になるにしても、減ることは間違いないし、それどころか、これによって倒産する企業が出てくる懸念があるというレベルだから侮れないはずだ。
次に、13兆5千億円という数字だが、これも一体どこから出てくるのか分からないのだが、一つ想像したのは、まさかとは思うが…
1%の税率upで、2.7兆円の税収アップになるはず。それは仮定するとしよう
だから、5%の税率upなら、
2.7×5 = 13.5兆円の税収アップ!
有り得ないと思うが、もしそうだったら一言で済む話になる。馬鹿じゃねーの?
そんな計算が成立するのなら、消費税率を350%上げればいい。2.7×350=945だから、これなら日本の赤字は1年で解消できるぞ。社会保障も安泰だ。よかったね。
小学生、いや、百歩譲って中学生程度の頭があれば、前述の内容と同じ理屈で説明できるから繰り返さない。税率を上げたら、税収の上昇率は下がる。1%で2.7兆円だったら、5%にしたときには 2.7×5 じゃなくて、もっと小さい倍率を掛けないと筋が通らない。
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